玄関マットは必要なものだと思っていた。実家にもあったし、どこの家にもある。疑ったことがなかった。
洗い替えを買おうとして値段を見たとき、ふと「これは何のためにあるのだろう」と考えた。砂を落とすため、といっても、うちの玄関に入るのは靴を脱いだあとの足だ。外の砂は靴底に付いたまま三和土に残る。マットの上を歩くのは、すでに素足かスリッパの状態になっている。
一か月だけ撤去して様子を見ることにした。結果として、そのまま戻していない。
なくして困ったこと
正直に書くと、困った点もあった。
雨の日、傘をたたんで置く場所の水滴が床に直接落ちる。マットがあったころは吸ってくれていたので、これは想定外だった。今は玄関の隅に折りたたみの傘立てを置いて、その下に受け皿を敷いている。
もう一つは見た目の問題で、玄関が少しそっけなくなった。これについては小さめの置物を一つ足して、自分の中では折り合いをつけた。
なくしてよかったこと
- マット自体を洗う工程が消えた(月一回、乾かすのに丸一日かかっていた)
- マットの下に溜まる砂を掃除する作業も消えた
- 掃除機とフロアワイパーが玄関まで一直線にかけられる
- 洗い替え用のもう一枚を保管する場所が空いた
いちばん大きかったのは三つ目だった。マットがあると、掃除のたびにめくるか、避けて通るかの二択になる。避けて通ると下に砂が溜まり、めくると手間が一つ増える。撤去してからは、廊下から玄関までを止まらずに一往復するだけで終わる。
洗う工程が消えたことも効いている。厚手のマットは乾きが遅く、部屋干しだと生乾きの匂いが出やすい。バスマットを洗えるタイプに戻した話を書いたときにも同じ問題に触れたのだが、乾きにくい布ものは、それ一枚で洗濯全体の予定を縛る。
もう一つ、予想していなかったのが埃の量だった。撤去して二週間ほどしてから、玄関まわりの床に溜まる細かい繊維が減っていることに気づいた。マットそのものが少しずつ毛を落としていたらしい。取り除いた側の掃除が増えるだろうと身構えていたのに、実際は逆だった。
代わりにやっていること
マットの代わりに、三和土を週に一度だけ拭くようにした。フロアワイパーの立てかけ位置を玄関の近くに変えて、気づいたときに一往復させる。所要時間は一分もかからない。
靴を減らしたのも効いていると思う。出しっぱなしの靴が一足になったので、そもそも汚れが溜まる場所が減った。掃除の道具を増やすより、掃除の対象を減らすほうが早いというのは続いた片付け習慣で書いたことの繰り返しでもある。
ペットがいる家や、小さい子どもがいる家では判断が変わると思う。うちは二人暮らしで、玄関を通る回数も限られている。同じことをやって同じ結果になるとは限らない。
ただ、「なぜあるのか」を一度も考えないまま置き続けているものは、玄関マット以外にもまだありそうだ。撤去して一か月試すだけなら、失うものはほとんどない。


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